2017年3月24日金曜日

クイーンズのギリシャ人街で入るべきレストラン キクラデス

かつて人種のるつぼ、今では人種のサラダボウルとも言われるニューヨーク。

なぜサラダボウルと言われるようになったのか?同じニューヨークの中に多様な人種が住んでいるけど、それぞれアイデンティティは維持していて、同化することはない。つまり、溶けて混ざってはいない。だから、るつぼ(melting pot)ではなくて、サラダボウルなのだ、ということらしい。

僕の記憶では、既に1990年にはサラダボウルという表現が日本でも聞かれた。当時は混ざらないことをやや否定的なニュアンスで語られていたような気がするが、、、もうかなり昔だからちょっと記憶があやしい。

さて、私はかつてニューヨークに住んでいたので、これからニューヨークに旅行しようとする知人から「ニューヨークのおススメスポットはどこ?」などとしばしば聞かれる。
リア充なら、ウィリアムズバーグとかスモーガズバーグに行ったらいいと思うし、予算がたくさんあるなら、ザガットサーベイ上位が低位置のお店をおススメする。ベタなのが好みなら、行列覚悟でカッツデリカテッセンやジョーズ上海もよい(実際に美味しいし)。
でも、私がそれ以上に人にすすめるのは、クイーンズのエスニック街である。「人種のサラダボウル感を味わいにクイーンズに行くといい。それも一つのニューヨークらしさだから。」と回答している。

クイーンには色々な民族が固まって住んでいる。その街に実際に行けば、歩いている人やお店にエスニック感があることに気が付くだろう。
韓国人街、ユダヤ人街、インド人街、ウェストインディアン(カリブ)人街、デンマーク人街、日本人街等々、色々ある。

観光客でもそれらのエスニック街に行くことを躊躇する必要はない。
ご存じのとおり、マンハッタンで英語ができないと、残酷なまでに人間扱いされない。しかし、それらエスニック街の住民は、英語ができない人にも慣れている。なので、英語ができなくてもマンハッタンよりは嫌な思いをしないでもすむだろう。もちろん、閉鎖的な人はいる。

その中の一つにギリシャ人街がある。
場所は地下鉄Nの終点、Astoria - Ditmars Boulevard駅周辺。

周辺にはいくつかギリシャ料理レストランやギリシャカフェなど、ギリシャ人経営のお店が並ぶ。
周辺のレストランの中で、最も人気があるのがタベルナ・キクラデス(taverna kyclades)である。いつ行っても賑わっている。


青いパラソルが印象的。おススメは外の席。

店員も愛想がよく、そして、美人である(重要)。
ちなみに、一般論として、ギリシャ人はとにかく陽気な人が多い。
ギリシャ人街にあるどのレストランに行っても、あなたが常識的な振る舞いをしていれば、ギリシャ人の店員からフレンドリーなサービスが受けられるだろう。

キクラデスで提供される料理はもちろんギリシャ料理。
ギリシャ料理というよりも、シーフードを中心とした「メディタレニアン(地中海料理)」と言った方がイメージしやすいかな。
というのも、ニューヨークでグリークと言えば、いわゆる「ダイナー」のイメージが強い。いわゆるダイナーとは、薄い味のコーヒー、無愛想な店員、大味の料理と三拍子揃ったまずいアメリカ飯の代名詞的存在である(個人的にはダイナー好きですが)。
そして、ニューヨークでダイナーを経営するのは大抵ギリシャ人と相場が決まっている。
かつてニューヨークに来たギリシャ人は比較的貧しかった。そして、ギリシャ人の資本家というのも少なかった。そこで、多くのギリシャ人移民が、ニューヨークにある飲食店ではじめは労働者として働き始め、その中の何人かが、独立していった。多くのダイナーのメニューにグリークサラダがあるのは、そういう背景がある。

ニューヨークで暮らしていた私にはギリシャ料理=ダイナーというイメージがあり、うまいギリシャ料理という想像がこれまでつかなかった。が、ここのギリシャ・シーフードは、いい意味でその観念を覆す。美味しい。
イカのフライをケチャップ的なソースにディップして食べる。

特徴としては、とにかくオリーブオイルをたくさん使って食べる、ということでしょうかね。たくさん油分を摂取したはずだが、意外と消化は悪くなかったな。

客層は必ずしもギリシャ系だけではない。日本人が紛れ込んでも、居心地は悪くない。

なお、マンハッタンのイーストビレッジにも支店がある。しかし、ニューヨークらしさを味わいたいならギリシャ人街で一番のにぎわいをみせるこちらである。


食後は、近隣のギリシャ式カフェに移ってみよう。ここではぜひ伝統的なギリシャコーヒーにチャレンジしていただきたい。
ギリシャコーヒーはとにかく甘い。エジプトコーヒーやレバノンコーヒーと同じである。あの一帯のコーヒーはなぜか激甘。
我が国を代表する激甘コーヒーであるMAXコーヒー、東南アジアを代表する激甘コーヒーであるベトナムコーヒーに匹敵する甘さである。
ギリシャ人が虫歯にならないか心配になるレベル。

お店によってはルクマデスというギリシャ式のドーナッツが売っている。これもぜひ一度試してほしい。これもとくかく甘い。コーヒーの甘さと相まって喉が渇くほど甘い。
日本で「私、甘いもの好きなんです」と言っている人は、ギリシャコーヒーとルクマデスを毎日食べても同じことが言えるか、試してほしい。
おススメは、キクラデスがあるあたりから、地下鉄N(ここは「地下」ではないけど)の高架下をマンハッタン方面にしばらく歩いた31Av.にあるCafe Boulis。
ここもまたギリシャ人らしい、フレンドリーな接客。
めったに日本人は訪れないのかもしれない。僕に、ルクマデスについて丁寧に説明してくれた上で、揚げたてを提供してくれた。
BOULISのチラシ

禅野靖司さんという建築史家の方が書いた「ニューヨークエスニックフード記」という本があるのだが、今回の投稿は、実はその本の一部の受け売りになっている(紹介したお店を含め)。
私は、10数年前、たまたま書店で発見して買って読んだのだが、今amazonで調べてみたらで、1999年の発行だそうだ。キクラデスもカフェボウリスも、少なくとも1990年代からは営業を続けているということになる。流行り廃りの激しい飲食業界において、立派なことだね。

ちなみに、このニューヨークエスニックフード記という本、丹念に書かれていて、すごく面白い。著者の禅野靖司さん、講演とかしてくれないかな。


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