久しぶりに本を一冊読んだ。藤岡雅「保身」。
五反田の地面師事件と、その翌年に起こった積水ハウスでのクーデターについてのノンフィクション。
読めば読むほど、地面師事件の真相は、積水ハウス側の誰かが、地面師グループと通じていたと思わせる。
阿部社長の責任を追求しようとした会長が返り討ちにあって事実上の解任となったことはここに書いてある通り、事実なんだろう。
ただし、用地購入担当者、その上司、社長といった責任ラインの誰一人にも取材できていない一方で、解任された和田会長の豊富なコメントが掲載されている。結局は和田会長の主張を伝えるためだけの書籍となっていて、多くの人が知りたいであろう、地面師事件が起こった原因については、マンション事業部がヘマした、功を焦ったというような指摘ばかりで、しっくりくる背景の説明や示唆はない。内通者がいて後で分前をもらってた、とか、社内で弱みを握られていた人がいた、とか、そういう話じゃないと腹落ちしない。
断片的ながら、相応の量の事実が時系列で紹介されるので、引き込まれますが、結局、地面師事件の当事者には取材できていないので、なんでそんなアホなことが起こるの?という疑問が残る本です。
あと、後半は色々主張したいことはあるんだろうけど、読み物としては正直面白くないです。
ネットフリックスの地面師見て、面白いと思ったら、これ読んでもよいと思いますよ。こちらはガチのノンフィクションなのでリアリティあります。