この個人型DC、個人型DC以外にも、個人型確定拠出年金とか、idecoとか、いろいろ呼び名があり、個人型401kなどと呼んでいるウェブの記事もある。これだけ呼び名があると、ググって調べようにも検索効率が悪い。業界側はidecoを流行らせたいのだろうが、idecoって言葉だけだとなんのことなのか全くわからない。せめて「個人」とか「年金」とかって語が含まれてた方が浸透すると思うんだけどな。
一方で今やすっかり定着したNISAというのも「ニーサ」だけだと何のことか全くわからない。けども事実として、この名前はかなり浸透した。結局、名前云々よりも、この制度がどれだけ世の中の人にとって使えるか次第で名前の浸透具合も決まる、ということだろう。何事も名前よりも中身だね。
さて、この制度の特徴に、長期間(原則60歳まで)引き出せない、月々手数料がかかる、という投資商品としては一般的なものの他、投資額が全額所得控除になる、というものがある。節税の手段が限られるサラリーマンにとって、最も注目する特徴はこの所得控除だろう。変額終身や個人年金保険に入っても、全額所得控除はないからね。
家族の人数にもよるだろうが、所得別にみたときに、この金融商品に最も関心を持つ(べき)層は、限界税率33%となる課税所得900万~1800万のサラリーマンだろう。このゾーンは、家族がいても長期的な投資・貯蓄に回せる金額がいくばくかはある場合が多い。そして、限界税率33%というのは、所得控除した時に実際に減る税金の金額としても、それなりのボリュームが出てくるので、手間をかけて節税するだけの意味が見いだせるだろう。
他方、課税所得が1800万を超える人ならば、こんなちまちました節税を考えずとも別の節税を考えるべきだろうし、課税所得900万未満の人は、長期間引き出せない個人型DCよりも手元の流動性を確保しておいた方がよいだろう(もちろん、生活スタイルによるが)。
雑誌などに、60歳から65歳の間の無年金の期間に受け取るのが得、などと書いてある。ただし、それが成り立つのは60歳からの5年間が、拠出している期間に比べて、収入が減る場合に限定されるでしょ。60歳以降も企業の役員として高収入を得る可能性もあるだろうし、親から相続した不動産が収益を生み出す場合もあるだろう。そんな可能性を一切無視して、あたかも加入しないと節税できない分損であるかのように書きたてるのは不誠実だと思う。
もちろん、課税だけについて言えば、支払いを繰り延べることには、時間価値がある。割引現在価値(NPV)を考えるならば課税については得である。ただし、それよりも遥かに大きな金額が、拠出として手元からなくなるのである。手元の現金がなくなり、60歳まで引き出せないということは、おおきな負の価値である。
金融機関のパンフレットや、個人が書いていると思われるブログについても課税メリットを過大評価しすぎだと思う。
もちろん再投資が非課税というのはおいしいし、メリットもある。が、60歳まで引き出せないことをもっと重視すべきだと思う。人生、何があるかわからないからね。